伊藤大輔監督の ≪王将≫≪王将≫今、日本映画の男優ベスト10を選ぶとすれば やはり、一位は阪東妻三郎だと思う。 このベスト10は人気投票ではなく、あくまで、 銀幕のスターとしての貫禄、演技、存在感、スター性、 そういったものを総合した時にこれほどのスター、役者はいないだろうという意味である。 今、お昼に阪妻の特集を放映している。 自前のビデオは『破れ太鼓』、『無法松の一生』、『雄呂血』の 三本だけであった。 先日、『王将』をやっていて念願かなってみることが出来た。 何度もリメイクされているが、やはり伊藤大輔監督、 阪妻のこの作品は群を抜いていた。 阪妻が良いんです.感動的ですらある。 演技というよりどんなシチュエーションに置かれても そこにいるだけで様になる. 泣けばこちらも泣けるほど自然と身体から滲み出る芝居。 笑えばすこぶる可愛い。 怒れば”このがんこオヤジが!”とこれまた可愛い。 特に『破れ太鼓』の彼は時代劇と違ったそして、木下監督独特の 底抜けに明るいユーモアにピタリとはまって、これもかわゆい。 話をもどして『王将』であるが、将棋の事はわたしは全然わからないが、坂田三吉の数奇な生涯を描いている。 これが、自然で、骨太で、つんつるてんの格好をしていても 、なんともいえない味がある。 歌舞伎出身で時代劇で天下を取った人だが、大きな演技で 非常に映画ニ向いていたと思う。 笑顔が自然でお芝居をしているとはとても思えない。 ここが田村三兄弟が追いつけない垣根である。 小春役は水戸光子、、丹下左膳の女房、おふじや、 暖流などで人気のあった美人女優である。 娘玉枝に三條美紀...しゃきっとして色っぽい。 関根名人に勝ったあと、父親に意見するところなど なかなか良かった・ さて、簡単なストーリーを. 全くの無学文盲であるが、ひとたび、将棋の駒を握ると 誰にも負けないという坂田三吉. 明治の終わりの大阪天王寺近くの、麻わらじ作りで、 その日暮らしの坂田三吉(阪妻)、小春(水戸光子)は、 仲の良い夫婦なのだが、女房小春にとって、 彼の将棋狂いだけが、悩みの種であった。 ”いい人なんだけどねえ”.。小春のいつもの口癖。 将棋の会と聞けば、仕事そっちのけで飛び出していく。 おかげでうちの中はいつも火の車。 さすがの小春も娘玉枝を道連れに鉄道自殺をしようとまで 思いつめたが、後に残る子供のような三吉のことを考えると、 それも決心がつかなかった・ 朝日新聞の将棋大会の席上で、小春家出と聞いて、さすがに 駒を放って、駆けつけた三吉は、以後、 一切、将棋には手を出さないと涙ながらに誓う. しかし、そこまで言われると、却って、小春のほうが そんな良人に心打たれ、どうせ、指すなら、 日本一の将棋指しになれと三吉を励ますのだった・ 折しも東京の新進将棋士関根八段(滝沢修)が来阪、 三吉はこれに挑戦、双方とも死力を尽くして戦うが、 ついに25銀の一手(よく分からないが)で、関根を倒した。 三吉は大阪に坂田ありと言われる専門将棋士になった. しかし、娘玉枝はそんな三吉に真っ向から意見をした. ただ勝つだけの将棋で品のない勝負をしたと。 これが坂田三吉の将棋か・.・・・と・ 烈火のごとく怒った三吉であったが、良く考えてみると玉枝の 言う事に一理あると気づいた. 無学文盲の悲しさ..ついに名人位は彼の頭上を 通り越してしまうのである。 歯ぎしりをし、こぶしを握り締めて、頑張ったが、 とうとう自分の実力を知り、上京して、 関根新名人を祝福した。関根も本当は名人ほどの腕前と、 三吉を認めており、彼もまた、三吉に頭を下げるのであった。 そんなとき大阪から小春危篤の報せが入る。 一生懸命に電話口で小春に向かって南無妙法蓮華経と 大念力込め、男泣きに号泣し、小春は電話を聞きながら 笑みを浮かべて息を引き取るのであった。 『無法松』も良いが、阪妻の王将はそれに劣らぬ出来である。 彼の演技と思えない名演技を観るに値する作品である。 明日は、『魔像』が放映される。 この作品は小学生の時に観ましたが、ストーリーは 覚えているものの、画面の記憶が無いので録画するつもりです。 制作 大映 1948年度 監督 伊藤大輔 原作 北条秀司 巨匠黒澤 明が世に出る前、伊藤大輔、衣笠貞之助、村田実、 マキノ雅弘、伊丹万作、田坂具隆、内田吐夢、山中貞雄、 稲垣浩など、絢爛豪華な監督たちがいたんですよ。 これらの監督の作品を観てから、黒澤作品を鑑賞して欲しいなと オバサンは思うのであります。 ジャンル別一覧
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